インバウンド市場の拡大はいつまで続くか?
「インバウンド市場の拡大はいつまで続くか?」は「東京オリンピック以降も続く」が45% 地方への拡大は「インフラ環境の整備」と「その土地ならでは魅力作りと情報発信」が重要
@DIME 3月14日(月)22時0分配信より引用
急増する訪日外国人観光客。2015年の訪日客数(推計値)は、対前年比で47%増の1973万人となり過去最高を更新。
旅行消費額も前年比71.5%増の3兆4771億円に達している。
これからの日本経済を牽引するとの期待もあるインバウンド市場は、果たしてこれからどうなるのか?
日頃の業務・ビジネスの中での取り組みはどの程度進んでいるのか、マーケティングの実務家による国際組織=MCEIの東京支部は、MCEI東京・大阪支部の会員を対象に、「インバウンド『実感』アンケート」を実施。
154名の回答を得て、その集計結果をまとめた。
■「訪日外国人客に声をかけられた・声をかけた経験がある」人は77%だが、外国語で対応できたのは19% 「訪日外国人客に声をかけられた・声をかけたこと」経験については、「何度もある」「数回ある」「1~2回ある」を合わせると77%となり、訪日外国人との接触は当たり前のことになりつつあることがわかる。
しかし、その際の対応については、「かたことで対応」「身振り手振りで対応」という人が79%とほとんどを占め、企業の最前線で活躍するマーケティングの実務家もコミュニケーションの面ではまだまだ課題がありそうだ。
■「訪日外国人客に利便性を提供するために対応が急務と思われること」は、情報へのアクセスをサポートするインフラ構築が急務 「訪日外国人客が不満・不便を感じること(上位3つまでを回答)」という問いには、「無料公衆無線LAN」55%、「コミュニケーション」48%、「目的地までの経路情報の入手」40%、「公共交通の利用方法。利用料金」34%といった項目が上位を占めた。
必要な情報へのスムーズなアクセスを保証するために、ハード(無線LAN等のインフラ環境)とソフト(言語・サイン・コミュニケーション等)の両面にわたるインフラ構築が急務と認識されている。
なお、これらの回答は、下の観光庁による「外国人旅行者の日本の受入環境に対する不便・不満」とほぼ一致する結果となっている。
■99%のマーケターが、「インバウンド市場の拡大は日本経済にとって重要なテーマ」認識 「インバウンド市場の拡大は日本経済にとって重要なテーマか?」の設問には、99%が「そう思う」「ややそう思う」と回答しており、総論としては重要テーマと捉えられている。一方で「あなたの業界にとっては・・・」となると、「そう思う」「ややそう思う」は87%に減少し、業種別でもやや濃淡が見られる状況であった。
■すでに社内でインバウンド対応を行っているとの回答が37% 「インバウンド対応の組織やプロジェクト」について聞いてみると、「組織がある」は、わずか11%と少なく、「プロジェクトで活動」の26%を含めても、すでに対応できているところはまだ37%程度であり、企業としての対応は遅れ気味のようである。回答者の業種別にみると、インバウンドへの取り組みが最も進んでいるのは「製造業」で、「組織がある」10%、 「プロジェクトで活動」35%だった。
広告代理業の「組織がある」9%、「プロジェクトで活動」31%がこれに続き、流通業や情報通信業を上回った。
■「インバウンド市場の拡大はいつまで続くか?」は「東京オリンピック以降も続く」が45%、 「インバウンド市場の拡大はいつまで続くか?」は度々話題になるところだが、マーケターの実感では「東京オリンピック以降も続く」が45%、「東京オリンピックまでは続く」が42%、とほぼ拮抗する結果となった。
■「中国・アジアからの観光客を中心とした大量購入(爆買い)はいつまで続くか?」は、「ここ2~3年がピーク」が45% 「爆買い」対しては、「ここ2~3年がピーク」と考えるマーケターが45%とトップであった。
インバウンド市場自体は今後も継続していくが、爆買いの嵐は永続せず、為替レートや中国経済の浮沈に左右される。また観光の目的がショッピングから文化・自然・風土などへシフトするツーリズムの成熟化により、インバウンド市場の質は変化していくと見ていることがうかがえる。
■「訪日外国人客はどんなコンテンツやイベントに魅力を感じると思いますか?」
1.日本の食文化(和食、寿司、天ぷら ・・・ ) 58票
2.伝統的な文化(伝統工芸、能、茶道、歴史 ・・・) 40票
3.Made In Japanに代表される高品質な製品/ショッピング 39票
4.エンタメ・コンテンツなどのサブカルチャー(ゲーム、アニメ、漫画 ・・・) 30票
5.日本のおもてなしサービス精神(きめ細やかさ、親切さ、丁寧さ ・・・) 28票
6.観光地(歴史的建造物、寺社仏閣、温泉 ・・・) 22票
7.日本的なライフスタイル(日本人の日常生活、現代文化、日本人気質・・・) 21票
8.日本独自の自然・四季(雪、花見、自然の景観 ・・・) 13票
9.交通機関などのインフラ(新幹線、電車、公共トイレ ・・・) 7票 10.日本の治安の良さ、安全 6票
10.清潔で衛生的な環境や街 6票
■「長く訪日外国人客の増加を維持していくために大切と思われることは?」 1.英語などのコミュニケーション能力の強化 21票 2.日本らしさ・日本の魅力の強化・発信 20票 3.ハードの環境整備(通信環境、交通環境、宿泊環境 など) 15票 4.経済環境 8票 5.リピーターの創出 5票
■「インバウンド市場拡大の恩恵が、都市部だけでなく地方まで波及していくために大切と思われることは?」
1.インフラ環境の整備 2.地方ならではのコンテンツ・魅力作りと情報発信 3.人の流れを作る(地方から地方へ) その他、都市間での連携や国策での地域産業育成など 上記を踏まえ、ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)専務理事/事務局長の新津研一氏は以下のように分析する。
「2012年に1兆円規模であったインバウンド市場は、2015年には3.5兆円規模に成長した。その中でもショッピング市場・飲食市場は、0.6兆円から、
2.1兆円へと4倍増、1.5兆円の新しい市場を日本のマーケットにもたらしたことになる。
わずか3年で1兆円の新規需要を提供する市場はマーケターにとって、「今後、さらに成長を続けるのか?不安定さを感じないのか?」「成長市場にどう対応したらよいか?」が大きな関心事項となった。
99%のマーケターが日本経済にとってインバウンド市場が重要なテーマだと捉えていることは、その市場規模や成長度から見て当然の結果ともいえる。
しかし反面、わずか1年前、日経MJヒット商品番付において横綱となった「インバウンド消費」が、ほぼすべての有識者の予想外だったことを考えると、ほぼ全員が1年という驚くべき短期間のうちに市場変化に追いついたというマーケターのアンテナ感度の高さを実証しているともいえる。
3/4を超えるマーケターが、実際に自分で訪日外国人とのコミュニケーションを実施していたことが判明したが、これは訪日観光客へのアプローチとして重要なヒントとなり得る。初めて直面する市場やお客さまに対して、日本人は気持ちが臆する面が少なくない。どんなものが好きで、どんな行動をしいているのか、有識者やマスコミ報道など手がかりに勉強しようとするが、バイアスがかかったそういった情報は誤った先入観となり、正しいマーケット把握を阻害する可能性もある。まずは、当マーケターと同様に、フィールドワークによって実体験を積み、現場を見ることが必要となる。
市場を把握する上で有効なのは、政府等の作成する定量的なアンケート調査や統計資料となるが、マーケターが捉えた訪日外国人の不便・不満解消のための対応の項目は、こういった統計資料と齟齬の少ないものであった。
公衆無線、言語コミュニケーション、交通案内などは訪日外国人が感じる不満と一致している。つまり、フィールドワークの実績が、訪日外国人の視点を意識することにつながり、「日本人目線でのみ観察していた日本市場を、外国人目線で見る」という第2の目を獲得したとも言い換えられる。
この第2の目は、閉塞感の多い日本市場の中に新たなビジネスの種を見つけ出す貴重な武器になるだろう」 引用ここまで。